アーカイブ | 7月 2017

住宅宿泊仲介業

記載日:平成29年7月30日 記載担当:行政書士小坂谷麻子

先日、住宅宿泊事業法(いわゆる、『民泊新法』。以下「法」といいます。施行時期未定)に基づく住宅宿泊事業について、事業主、管理業についての制度について、ご案内いたしました。詳細はこちら。

今回は、住宅宿泊仲介業の登録制度についてです。

■住宅宿泊事業とは

別のところにも記載いたしましたが、住宅宿泊事業とは、住宅に人を1年間で180日を超えない範囲で宿泊させる事業で、『家主不在型』と『家主居住型』があります。

宿泊事業を行う場合は、都道府県知事や保健所設置知事への届出が必要です。

また、家主不在型の住宅宿泊事業にかかる住宅の管理を受託する『住宅宿泊管理業』を営もうとする場合は、国土交通大臣の登録が必要となります。

■住宅宿泊仲介業の登録制度

 ◆住宅宿泊仲介業務とは

住宅宿泊仲介業務とは宿泊者と住宅宿泊事業者との間の宿泊契約について、代理して契約を締結し、又は媒介する行為で、旅行業者以外の者が報酬を得て、これらの行為を行う事業が、住宅宿泊仲介事業です(法第2条第8項、9項)。この事業を営もうとする場合、観光庁長官の登録が必要となります。旅行業法3条には、旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならないとありますが、この登録を受けたことにより、旅行業法3条の規定に関わらず、住宅宿泊仲介業を営むことができるといわけです(法第46条)。

 ◆旅行業について

旅行業とは、報酬を得て、旅行者と運送・宿泊サービス提供機関の間に入り、旅行者が「運送又は宿泊サービス」の提供を受けられるよう、複数のサービスを組み合わせた旅行商品の企画や個々のサービスの手配をする行為です。

そして、「運送又は宿泊のサービス」とは、運送事業者、宿泊事業者により、事業として提供されるサービスをいい、「宿泊のサービス」は旅館業法に基づく旅館業に該当するサービスを指します。

この中で、簡易宿所等の旅館業に該当する施設の仲介を行うサイトは、旅行業法3条の旅行業の登録が必要となるのか、住宅宿泊事業の仲介を行うサイト等はどうなるのか議論がされてきておりましたが、住宅宿泊事業については、宿泊サービス提供契約の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければならないということになりました(法第12条)。つまり、旅行業者以外が仲介を行う場合には、観光庁の登録が必要となったわけです。

 ◆登録の申請

登録を受けようとする場合は、商号、名称または氏名、住所(法第47条第1項1号)、法人の場合は役員氏名(同2号)、未成年者の場合は法定代理人氏名及び住所(同3号)、営業所又は事務所の名称及び所在地(同4号)を記載した申請書を観光庁長官へ提出しなければなりません。

◆登録の拒否

成年後見人等、破産手続開始決定を受けて復権を得ていないもの、禁固以上の刑に処せられ、同法または旅行業法等の規定により罰金の刑に処せられ、執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者、暴力団員等、その他国土交通省令で定めるものなど、登録拒否となる事由が定められています。なお、法人については、役員について拒否事由が定められています(法第49条)。

 ◆登録免許税 9万円(登録免許税法別表第1第142の3)

登録更新 5年更新(法第46条第2項)

 ◆業務

・宿泊者との宿泊契約「住宅宿泊仲介契約」の締結に関し、住宅宿泊仲介業約款を定め、実施前に観光庁長官へ届出が必要となります。ただし、観光庁が標準住宅宿泊仲介業約款を定めて公示した場合、同一のものを使用する場合は届出が不要です(法第55条第1項、2項)。そして、仲介業者は約款を公示する必要があります(法第55条第3項)。

・民泊ゲスト及びホストから受ける手数料の公示

・宿泊者との宿泊契約締結時、書面の交付による説明が義務づけられています(法第59条)が、電磁的方法によることも可能です(法第59条第2項、33条第2項)。

・営業所または事業所ごとに国が定めた様式の標識を掲示しなければなりません(法第60条)。

◆禁止事項

・名義貸の禁止(法第54条)

・住宅宿泊仲介契約の締結の勧誘をするに際し、又はその解除を妨げるため、宿泊者に対して、当該住宅宿泊仲介契約に関する事項であって、宿泊者の判断に影響を及ぼす事実を告げず、又は不実のことを告げる行為や、国土交通省令で定める行為を禁止されるます(法第57条)。

・また、従業員に対して、法令違反行為を行うことをあっせんしたり、便宜供与をすること、法令に違反するサービスの提供を受けることをあっせんし、便宜供与をすること、これらのあっせん、便宜供与を行う旨やこれらに類する広告をすること、その他宿泊者の保護に欠け、住宅宿泊仲介業の信用を失墜させる高度交通省令で定められる行為は禁止されます(法第58条)。

 ◆行政の監督

・業務の改善・停止命令などが定められていますが、国内の住宅宿泊仲介業者だけでなく、海外に拠点を持つ外国住宅宿泊仲介業者に対してしても、請求を行うことが定められています(法第61条)。

 ◆罰則

・不正な手段により登録を受けた場合、名義貸しをして他人に運営代行や仲介サイトを運営させて場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が規定されています。また、その他の罰則も詳細に定められています(法第72条〜)。

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情報処理学会 DICOMO2017

(記載日)平成29年7月3日  (担当)弁護士 小坂谷聡

2017年6月28日(水)から30日(金)までの3日間、札幌・定山渓で開催された情報処理学会・マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2017)シンポジウムに参加し、「刑事手続におけるデジタル証拠の改ざん防止措置について」と題した論文についての研究発表を行いました。

 

 

このDICOMOというのは、主に情報科学関連の分野の研究者・学生等が参加するいわゆる理系の学会です。去年の4月から立命館大学大学院博士後期課程に進学し、デジタルフォレンジックや情報セキュリティ関係について研究を始め1年が経っているとは言え、何分にも文系法学部出身の弁護士にとっては、簡単に攻略できるような代物ではありませんでした!

 

ところで、近年、裁判実務においても画像や音声データなどデジタル証拠の重要性が増していますが、デジタル証拠というものは改ざん・改変が容易でありながら、一般的にその信頼性は高く、一旦改ざんされてしまえば誤判を招きかねない危険な証拠でもあります。今回の研究発表は、このデジタル証拠の改ざんを防止するという点に焦点を当てたものです。具体的には、まず、改ざんが如何に容易にできるかという点について被験者による実証実験を行い、また、デジタル証拠が裁判実務においてどのように扱われているかを概観した上で、改ざん防止の観点から、デジタル証拠の改ざんの有無を客観的に確認できるシステムとして、ハッシュ値保存システムの構築について考察を加えました。

今回の研究は、システムについての提案についてのみであって実装にまでは至っておりませんが、今後、さらに研究を発展させていきたいと考えています。